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茅舎忌   

2025年 07月 17日

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 旋律 
       谷川俊太郎

わずか四小節の
その旋律にさらわれて
私は子どもに戻ってしまい
行ったことのない夏の海辺にいる

防風林をわたる風が
裸の肩を撫でる
パラソルをさした母親は
どこか遠くをみつめている

前世の記憶のかけらかもしれない
そこでも私は私だったのか
こころが見えない年輪の渦巻に
どこまでも吸いこまれてゆく

 

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 「ホトトギス」雑詠 高濱虚子選巻頭原稿  (川端茅舎発掘関連資料より)


 小暑 鷹乃学習(たかすなわちわざをなす) 茅舎忌

 暑中お伺い申し上げます

 今日は川端茅舎の忌日で八十四年を数える。
 時を経てもなお、数多くの人々に読み継がれている。
 わたしの心のなかで茅舎の清澄無垢な言霊は生き続けてゆく。

 安静養生専一に、時折パソコンで映画を観たりしながら過ごす日々。
 なかでも、小泉堯史監督の作品群をくりかえし観ては親友と語り合う。
 その純度の高さ、自然四季風景描写の丹念さ構成の緻密さ、端正なすばらしい作品ばかり。
 あえていくつか挙げるなら、『阿弥陀堂だより』『博士の愛した数式』『雪の花ーともに在りて』かなあ……。
 これからも、時代を越え映画史に残り続ける小泉堯史監督の新作を祈念してやまない。

 もうしばらく更新を休ませていただきたく存じます。
 極暑続き、みなさまどうかくれぐれもご自愛なさいますよう。
 

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# by kunpu-15 | 2025-07-17 09:44

もちろんあなたといっしょに   

2025年 02月 22日

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 鏡
       谷川俊太郎

なるほどこれが「私」という奴か
ちんこい目が二つありふれた耳が二つ
鼻と口が一つずつ
中身はさっぱり見えないが
多分しっちゃかめっちゃかだろう
とまれまた一つ年を重ねて
おめでとうと言っておく
お日様は今日も上って
富士山もちゃんとそびえてるから
私も平気で生きていく
もちろんあなたといっしょに
ありとあらゆる生き物といっしょに


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 雨水 土脉潤起(つちのしょううるおいおこる) 高濱虚子生誕日

 結婚記念日が巡りくる。
 薫さん、ふたりでささやかに祝おうね。

 思いっきり深呼吸ができる日常に戻れるよう、養生に専心したいと切に願っております。
 しばらく更新をお休みいたします。

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# by kunpu-15 | 2025-02-22 09:22

でっかいマルを描いてみたい   

2025年 02月 08日

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心の色
      谷川俊太郎

食べたいしたい眠りたい
カラダは三原色なみに単純だ
でもそこにココロが加わると
色見本そこのけの多様な色合い

その色がだんだん褪せて
滲んで落ちてかすれて消えて
ココロはカラダと一緒に
もうモノクロの記念写真

いっそもう一度
まっさらにしてみたい
白いココロに墨痕淋漓
でっかいマルを描いてみたい


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 黄鶯哯晥(うぐいすなく) 事八日 針供養

 春や立つ。春雪が舞い積もる。世事雑念を忘れ日がな風花を眺めて思いは尽きない。
 雪が大好きな薫さん。はしゃいでは小さな雪だるまを作ってくれたっけ。

 親友とよく話すのが、高校生や大学生、若い人のさりげないやさしさ。
 日常でも車椅子を押してくれたり、声をかけ助けてもらったり、なにげない自然な行動や言葉。
 彼女の話のなかでもよく聞いては、そうよね、あったかい気持ちでいっぱい!と感心し合う。
 こうした若い世代の人たちと接して、どれだけ勇気づけられることだろう。
 希望の灯を実感させられうれしくなる。

 
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# by kunpu-15 | 2025-02-08 09:56

見慣れたここが そこがここ   

2025年 02月 01日

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 夕景
      谷川俊太郎

たたなづく雲の柔肌の下
何気ないビルの素顔が
夕暮れの淡い日差しに化粧され
見慣れたここが
知らないどこかになる
知らないのに懐かしいどこか
美しく物悲しいそこ
そこがここ

いま心が何を感じているのか
心にもわからない

やがて街はセピアに色あせ
正邪美醜愛憎虚実を
闇がおおらかにかきまぜる


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 鷄始乳(にわとりはじめてとやにつく) 二月礼者 重ね正月
 
 今日から二月、わたしのいちばん好きな時季。
 寒暖の差、体調維持を最優先に暮らしている。
 
 選句もなんとか700句ほどにしぼったものの、はてさてこれを半分にしぼるのは至難。
 ○○選とか○○特選などにかかわらず、まっさらな眼で読んで選句してほしいという依頼に、はたしてどこまで応えられるのだろうか。
 一頁二句、こんな時代だから四季順にして季題別索引もと語らい、ともかくまずは選句だよね。
 思いはじゅうぶん理解した上であえて、やっぱり自選も大切やない? 
 そうなんだけど……。あなたはブレないでしょ、ストレスもあるはずなのにポジティブだし。
 齢を重ねてきたぶんだけ選択したのもわたし、ストレスをひきずりたくないし弱音や愚痴をこぼすとそれだけ気持ちが貧しくなるやない。薫さんみたいに笑顔で過ごしたいとよ。
 わたしは自分の未来を信じる。
 
 なにをしていても親友の具合が気にかかる。
 彼女の存在がいかに大きく尊いものかを今さら痛感させられている。
 明日は節分、明後日は立春。
 福を願って養生専一。


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# by kunpu-15 | 2025-02-01 09:25

わたしはもっとあなたが好きになる   

2025年 01月 25日

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 水のたとえ
        谷川俊太郎

あなたの心は沸騰しない
あなたの心は凍らない
あなたの心は人里離れた静かな池
どんな風にも波立たないから
ときどき怖くなる

あなたの池に飛びこみたいけど
潜ってみたいと思うけど
透明なのか濁っているのか
深いのか浅いのか
分からないからためらってしまう

思い切って石を投げよう あなたの池に
波紋が足を濡らしたら
水しぶきが顔にかかったら
わたしはもっとあなたが好きになる



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 水沢腹堅(さわみずこおりつめる) 初天神

 大寒というのに、とまどうような暖かな日々が続く。
 先日の通院時も纏っていた半マントを脱ぎワンピースのみに。タクシーを待つ間の日差しと風が心地よかった。
 整形外科では両膝の注射後、定期的な背中・膝のレントゲン、骨密度検査結果を詳細に話される温厚な院長。内科では看護師さんが車椅子のわたしを出迎え、院長が胸や血圧を測定しながら実のある話を聞かせてくださる。
 こんなふうに、近隣の両院の主治医や看護師さんたち、友たちに恵まれ、いろんな方々に支えられて日常の暮らしがある。
 深謝しきり、そして幸せ。
 地震、この自然現象、温暖化は人がいなくならない限りおさまらないのかもしれない。ならば現況をどう生きていくのか、それがわたしたちの課題だろう。

 目下、長年の句友からの依頼で、5700余句の選句にとりくんでいる。
 かなり集中力を要する作業だ。
 これだけの句をデータ化し、プリントアウトするまでの労力は並大抵ではなかったろう。
 長きにわたる俳歴を辿る道程は、句日記そのものを読み返すことであり、明日への前向きな姿勢を如実に物語る。
 どうしてもあなたに任せたいという友の意志に、拙いながら一心に選句を進め応えなければと励まされている。
 電動ベッド上の身、朝昼時間を決めて300~350句ほどにしぼる希望に近づきたい。


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 インフルエンザに感染した親友夫妻も、ようやく回復の兆しにむかっているものの、彼女の具合が心配でならない。
 薫さん、見守ってね、お願い!


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# by kunpu-15 | 2025-01-25 08:20